マグロ漁船の話

  • 地獄針

    初航海のとき、先輩たちから「揚げ縄中は縄を踏むな!」「縄を手に巻いてあげるな!」と口やかましくいわれた。もし、その縄にマグロがかかっていれば、急にマグロが走り出し、縄が身体に巻きついて、海にもっていか…

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  • 会合

    不漁が続き、操業回数が増え、航海が長くなると、日本で積み込んだ漁具や日用品や食糧・エサなどが切れてくる。それを日本を出港する仲間の船に届けてもらう。洋上で船と船を寄せ合って搬送品を受け渡しすることを、…

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  • 適水

    食堂の黒板に毎日「入レ2時」とか「アゲ13時」などと時間が記される。入レは投縄開始時間で、アゲは揚げ縄時間である。延縄を入れて、揚げて、また入れる。来る日も来る日も同じ作業の繰り返し。漁があるかぎり、…

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  • シャチ回し

    「近頃、マグロの腹には、可哀想なくらい何も入っていない」と、マグロ漁師からよく聞かされる。エサがなく、痩せて、脂がない。その原因のひとつがクジラだという。捕鯨反対で年々増え過ぎ、水平線がクジラで真っ黒…

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  • 赤道祭り

    先日、ぼくが乗っていた遠洋マグロ漁船「第36合栄丸」の元漁労長、山田勝利さんから、新聞が送られてきた。2007年12月20日の高知新聞で、《わが町の100年 室戸の遠洋漁船1980年ごろ》というタイト…

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  • 乗組員

    マグロ延縄漁は、漁労長の腕次第だといわれている。1年以上も長い航海をする遠洋マグロ船は、億単位の金が動く。船主からその船という財産と、乗組員の生命を預かる最高指揮官であり、乗組員は漁労長を「船頭」とか…

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  • 揚げ縄

    「いらっしゃい!」  嵐の海に、先引きの掛け声が響き渡る。と同時に、延縄を巻き上げるラインホーラーが「キューン」と唸りをたてて止まる。  「トッタリや!」マグロが食いついた枝縄に、トッタリという予備の…

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  • 航海

    ミナミマグロの漁場、アフリカ大陸の南端ケープタウン沖まで、40日余かかる。時速11ノット。自転車のようなゆったりとした速度で、漁場を目指してひたすら南下する。 朝、日の出とともに起き、朝食を食べている…

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  • 補給

    操業中のマグロ船は、3ヶ月から100日に一度、補給のため外国の港へ寄港する。3~4日停泊し、燃料、水、食糧、餌などを補給。乗組員は船長から入港金(ぼくが乗船していた頃は10万円)をもらって上陸するが、…

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  • カシキ

    マグロ漁船がまだ木造船だったころは航海も早く、見習い船員はメシ炊きから叩きあげられた。このメシ炊きのことを「カシキ」といい、古い船員たちは皆カシキの経験がある。だから漁師は料理が上手い。マグロのハラワ…

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  • 漁師志願

    父親が若い頃、外国航路の船乗りだった。子供のころから海の話を聞き、海に憧れ、宝島、キャプテンクックの冒険、15少年漂流記などの海洋冒険小説に胸をおどらせた。湘南海岸へよく行っては、沖行く大型船を見て水…

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  • 漁獲規制

    1978年、僕の初航海は南アフリカのケープ沖から始まって、豪州オルバニー沖、タスマン海、ニュージランド沖へとミナミマグロを追い、1年余で満船帰港した。二航海目は、ニュージランドに漁がなく南大西洋のアル…

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  • 南極おろし

    漁があるかぎり、マグロ漁船はどんなに海がシケようと休むことはない。「オチナギ」といってマグロはシケのときによくかかる。だからついつい無理をして海難事故も絶えない。船員たちはスタンバイのベルでたたき起こ…

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  • ソーメン流し

    マグロ漁船の一日は深夜2時ごろから始まる。枝縄の釣りにイカやアジやサバなどのエサをつけて延縄を仕掛ける投縄。この作業は船長、甲板長、一等航海士をリーダーに3班に分かれ各班5名編成。3日に一度この枝縄の…

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  • 吠える40度線

    漁船の中でも一番過酷なのは、マグロ漁船だろう。一度航海に出れば、帰港するまでに1年半から2年はかかり、それだけ長い間、家族と離れて沖で生活する事になる。全長15m、幅8mの狭い空間に20数名の男たちが…

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