補給

操業中のマグロ船は、3ヶ月から100日に一度、補給のため外国の港へ寄港する。3~4日停泊し、燃料、水、食糧、餌などを補給。乗組員は船長から入港金(ぼくが乗船していた頃は10万円)をもらって上陸するが、パスポートは持っていない。船員手帳がパスポートの代わりを果たし、船員交代のため飛行機に乗る場合でも船員手帳があればいい。
 入港中、船員たちは家族に電話をかけたり、手紙を出したり、ショッピングを楽しんだり、国際親善をしたり…と思い思いに休暇を過ごすが、コック長は入港中も船員たちの食事を作らなければならない。だからコック長は日本を出港したら帰港するまで一日も休みなく、むしろ補給は食糧の積み込みなどで忙しい。注文した食糧を満載した大型トラックが船に横付けされ、船員たちが一列に並び、手渡しで船に積み込んでいく。10キロ入りキャベツ30箱。10キロ入りジャガイモ20袋、玉ねぎ20袋、牛ロース50キロ、ヒレ50キロ、タン20キロ…。
 沖では水は貴重だが、入港中は自由に使える。ホーレン草をどっさり湯がいて冷凍したり、白菜の漬物をたっぷり作っておく。補給のときにこうして食材を仕込んでおけば沖で自分が楽になれる。
 補給でいちばんの楽しみといえはなんと言っても、日本の家族から送られてきた荷物だろう。子供を撮影したビデオテープや便りや写真、新聞、雑誌、本や酒、肴、菓子やカップ麺などが入っていることもある。
 マグロ船がよく補給に入る港は、カナリア諸島のラスパルマスとの南アフリカのケープタウン、南米ペールーのカヤオ。ぼくが3航海で寄港した港は、南アフリカのダーバン、ケープタウン、ポートエリザベス、ダカール、ラスパルマス、オーストラリアのフリーマントル、タスマニア島のホバート、ニュージーランドのウエリントン、南米のモンテビデオ、パナマのバルボア。ミナミマグロを追っていたので、南半球の港が多かった。
 いま、経費節約のために、入港しないで洋上で補給する船が増えたと聞く。半年以上もオカに上陸することができず、来る日も来る日もシケの中でマグロと闘うマグロ漁師。想像するだけでもつらい。
 (2007年 7月9日)
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