築地市場は日本の財産   斎藤健次

「毒物の上に市場をつくるな!食の安全を守れ!」
 東京都が進める「築地中央卸売市場移転」の反対デモ(10月3日)に参加した。移転先は豊洲の東京ガス工場跡地で、ベンゼン、シアン、六価クローム、ヒ素、水銀、鉛、カドニュームなど環境基準値をはるかに超えた有害物質の汚染土壌。東京都はこれらの物質の存在を認めながらも、「附則第3条」という悪法を作って、移転計画を進めている。地震時に液状化が懸念され、有毒、有害物質が噴出恐れのあるところに、鮮魚や青果などの生鮮食料を大量に扱う築地中央卸売市場を移転させることは食の安全を脅かすものであり、絶対許してはならない。
 石原知事は、都知事選で「築地は増え続ける需要に対して手狭になった。築地は古いから汚い、不衛生だ」と、耳を疑うようなことをいった。戦火をくぐり抜け、暖簾を代々受け継いで、日本の食文化を守ってきた築地市場に何ということを言うのか。ぼくは築地へ買出しに行くが、一度もそのようなことを感じたことはない。場外の狭い路地から漂う鰹節やほうじ茶を煎るイイ匂い。仲卸しが軒を並べる場内の通路から、魚河岸の男たちの人情や心意気が伝わってたまらなくいい。ウチの店は築地で仕入れているという調理人の誇り。それがお客に伝わってあの店はわざわざ築地まで行って仕込んでいるから間違いないと、説得力をもつ。
 東京都はなぜ強引に築地市場を、豊洲に移転させたがっているのか。築地跡地に2016年招致を目指すオリンピックメディアセンターを建設するというが、どうしても必要ならば移転先の豊洲に作ればいい。名古屋市や大阪市の前例をみても東京オリンピックの再招致は難しく、真の狙いは銀座に近い一等地を売却して約2兆円の売却益を得たうえに、不動産界から、都市開発で巨額な利益を得るためだろう。
 ぼくはマグロ船のコック長として、世界の港の市場を見てきた。一日5万人が出入りし、約24億円の取引があるこの世界一の築地中央卸売市場こそ、世界遺産に値する貴重な財産だとぼくは思う。東京都は移転計画を白紙撤回して、現在地での再整備を目指すべきである。
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