男の料理   斉藤健次

近ごろ、男の料理本がよく売れているそうである。今朝の新聞にも雑誌広告が3誌。《食べること、生きることに貪欲な男たちに、ates》《家メシ、旅メシ、男メシ、prost》《食のエンターテイメント、dancyu》
料理教室に通う男性が急増し、デパ地下に男性客が増え、高級食材専門のスーパーが登場。合羽橋の道具街では、ちょいプロ級を目指す素人さんが本格的な調理道具を買っていく。定年を迎えた団塊の世代の男たちが時間と金をかけて自慢料理を作っている。
 先日も、ある出版社から食の雑誌を創刊するので、取材したいとの電話があった。なぜ、いま食の雑誌をたちあげるのか。編集者の話では、グルメブームやワインブームを経て、日本の食文化が高まり、新しい切り口の食情報を読者は求めている。食べたい、知りたい、作りたい。そのために、毎号ひとつの食材を徹底的に解剖する。
 で、創刊号は一冊まるごと、マグロ特集。サクの買い方、切り方、解凍、保存方法。生涯泳ぎ続けるマグロ生態学。
 何より私が伝えたいのは、マグロ漁師のこと。1年以上も家族と離れ、荒れ狂う海で命を賭けてマグロを追う男たち。そこには想像を絶する壮大なドラマがある。
 食材を知ることでドラマを味わい、食卓がもっと楽しくなる。漁師から教えてもらった漁師料理こそ、男の料理そのものではないだろうか。
(2007年6月1日、東京新聞ショッパーより)
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