乗組員

マグロ延縄漁は、漁労長の腕次第だといわれている。1年以上も長い航海をする遠洋マグロ船は、億単位の金が動く。船主からその船という財産と、乗組員の生命を預かる最高指揮官であり、乗組員は漁労長を「船頭」とか「親分」とか「親父さん」と呼んだりする。
漁船の場合、漁場の選択など操業に関する全責任を負っているのが漁労長なら、操船の責任者は船長である。船具や食糧の積み込み、航海事務、外地出入港の渉外担当などにあたり、船員法で医者や警察に代わる権限が船長に与えられている。たとえば、操業中に船員が大怪我をしたとき治療のために帰国させたり、喧嘩などで傷害事件をおこした船員を船内に監禁し、強制送還することもできる。
沖で操業中の船は、通信長(局長)がその日の漁獲量を船主に報告する。かつては、近くで操業中の船に分からないように暗号で送ったが、最近は衛星通信の飛躍的な発展で暗号も、SOSもなくなりつつある。毎日の操業報告もファックスで送り、緊急の場合は船舶電話もある。地球の裏から家族へ、携帯電話で話すこともできる。通信の発展は、シケと戦う船員たちにも大きな力となっている。
マグロ漁船は、甲板部と機関部とに分かれており、一等航海士(チョッサー)は甲板部の仕事を指揮監督し、甲板長(ボースン)が甲板員に仕事を指示する。釣り上げたマグロを凍結し、荷崩れしないように魚倉に納めていく責任者が冷凍長。投縄がすぐに出来るように、艫(トモ)で枝縄やビン玉の整理をするトモのおんちゃんはベテランの甲板員があたる。
機関部のトップ、機関長の下に、一等機関士(ファースト)、二等機関士(セコンド)が控え、油差しの機関員に仕事の指示をするのが操機長(ナンバン=№1オイラー)である。
船長、通信長、航海士、機関士は海技資格が必要だが、漁労長や甲板長、操機長は資格がなくても従事でき、免許より経験が重視される。
乗組員の総数は、船によってまちまちだが、20名から25~6名といったところか。その賄いを司厨長(コック長)が一人でこなす。操業中は4食、限られた食材でシケの中、帰港まで休みなくメシを炊き続ける。
ぼくが乗務していたときは、全員が日本人だった。いまは、給料の安いインドネシア人が15~6名。日本人は海技免許をもつ幹部7~8名ぎりぎりの人数で、やっと船を出しているのが現状である。
(2008年1月7日)
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