「吼える40度線」室戸市で試写会  高知新聞 1月13日朝刊より

脂の乗った高級ミナミマグロは、暴風が吹きすさぶ南半球の高緯度で育つ。「吼える40度線」と船乗りに恐れられたその海域に、本県のマグロ船は半世紀前から果敢に挑んだ。
荒波に突っ込む豪快な土佐船に魅せられ、東京出身の斎藤さんは本県に移り住み、関係者に乗船を直訴。1978年から6年間、室戸漁協所属の「合栄丸」にコック長などとして乗り込み、「何度も死ぬ思いをした」。その体験をまとめた「まぐろ土佐船」で2000年度の小学館ノンフィクション大賞を受賞した。
故・青柳裕介さんが同作品を漫画化した後、映画化の話も出たが、海外ロケなど経費がネックとなり頓挫。しかし「遠洋マグロ船の様子を映像で残したい」という斎藤さんらの思いは強く、昨年6月、水産映画を多く手掛ける黒田プロダクションに持ち掛け、映画化が決まった。
斎藤さんと「合栄丸」の漁労長だった山田勝利さん(72)=同市吉良川町=が1980年3月から20カ月間にわたり、撮影した計80時間のビデオテープを1時間11分に編集。南アフリカ共和国のケープタウン沖など南緯40度付近で、操業した航海の様子を収めている。
荒波を行く船。修羅場と化すはえ縄漁。釣り針が手に食い込んで、同僚に手術される様子。入浴や食事など船内風景。家族からの手紙に涙する乗組員。映像からは、故郷から遠く離れた海で、命がけで働く男たちの息遣いが伝わってくる。
作品には、元マグロ漁船員で演歌歌手の鳥羽一郎さんも友情出演。船友への思いを静かに語る。
今月6日に完成し、「土佐船の本拠地」室戸市で初公開。当時の甲板長も駆け付けた。山田さんは「船員の生きざま、誇りの証明。今の子供たちにもも、室戸の歴史として見せたい」。関係者によると、遠洋マグロ船を取り上げた映画は恐らく初めてといい、斎藤さんは「出来上がりを見て何度も泣いた。胸を張って見せられる作品になった。海の男たちの力強さを多くの人にみてもらいたい」と力をこめる。
今月末にはDVDの販売予定。全国の漁師町での上映や、劇場での公開も目指している。
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